年収の壁対策「事業主の証明による被扶養者認定」恒久化について
令和7年10月1日厚生労働省より、年収の壁・支援強化パッケージの一環として実施していた「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」を、今後は恒久的な運用とする旨の通知がなされました。これにより、「当面の措置」として運用されていたものが、今後は制度として運用されることになります。
年収の壁・支援強化パッケージとは
「年収の壁・支援強化パッケージ」は、パート・アルバイトなど短時間勤務の方が“年収の壁”を気にせず働けるように支援するための仕組みです。
その中でも「年収130万円の壁」への対応として導入されたのが、事業主の証明による被扶養者認定制度です。

仕組みの概要
この制度では、繁忙期などで一時的に収入が増えた場合でも、事業主が「一時的な増収である」と証明することで、従業員が引き続き健康保険の被扶養者として扱われるようになります。
たとえば、年末商戦の1か月だけ勤務日数が増えて収入が一時的に130万円を超えた場合でも、事業主の証明書を添付すれば、扶養から外れることを避けられることがあります。
制度の目的と効果
この仕組みの狙いは、被扶養者の認定をより柔軟かつ迅速に行えるようにすることです。
これにより、働く人が希望する働き方を選びやすくなるだけでなく、人手不足が深刻化する中で、企業も貴重な労働力を確保しやすくなります。実際、被扶養者から外れることを懸念して、年末に働き控えをするという残念なことが起きています。事業主の証明による被扶養者認定制度は、事業主の証明のみで扶養から外れることを避けることができ、労働者と企業の双方にとってメリットのある制度です。
厚生労働省は当初、この制度を「年収の壁」対策として時限的な措置として運用していましたが、最新の通知により恒久的な仕組みとなりました。
方法はこれまでと変わらず、被扶養者認定に必要な通常の書類に加え、事業主による「一時的な収入変動であることの証明書」を提出することで引き続き利用できます。
企業・人事担当者へのポイント
企業の人事・労務担当者の皆さまは、従業員からの相談に対応できるよう、以下の点を確認しておくことが大切です。
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「事業主の証明書」の様式と発行フローを整理しておく
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繁忙期やシフト増加時に、該当者への案内をスムーズに行う
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一時的な収入増加が扶養認定に影響しないよう、社内でも周知する
こうした対応を整えておくことで、従業員の不安を減らし、安定した雇用関係を維持することができます。
「被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書」(WARDファイルにしましたので、ご自由に利用ください)
【参考】
「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いの恒久化について(令和7年10月1日保保発1001第1号)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251006S0050.pdf
「年収の壁・支援強化パッケージ」における、社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外及び事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いについて(令和5年10月20日保保発第1020003号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc8012&dataType=1&pageNo=1


