「2026年秋(第2回)人的資本・労務リスク調査白書」を公開しました
女性活躍と仕事・育児の両立に関する企業実態調査
当社では、春に実施した「第1回 人的資本・労務リスク調査」に続き、2026年秋の第2回調査として、「女性活躍と仕事・育児の両立に関する企業実態調査」を実施しました。
今回の調査では、従業員30~300名の企業270社を対象に、女性管理職の登用状況、男女間賃金差異、男性の育児休業、仕事と育児の両立支援、さらに育児休業や短時間勤務を利用する従業員を支える職場側の負担まで幅広く調査しました。回答者の93.3%が代表者または役員であり、経営側から見た女性活躍・両立支援の実態が反映された調査となっています。
第2回人的資本・労務リスク調査2026秋(女性活躍と仕事・育児の両立に関する企業実態調査白書)

調査から見えたのは、「制度をつくる」だけでは解決しないという現実
女性活躍や育児支援については、法改正や社会的要請を背景として、多くの企業で制度整備が進んでいます。
一方で今回の調査からは、制度があることと、実際にその制度が機能することとの間には、まだ大きな隔たりがあることが見えてきました。
主な結果は次のとおりです。
・61.9%の企業で、女性管理職が「ゼロ」または「10%未満」
・男性育休の取得実績があり、取得期間を把握している企業の69.0%で、最も多い取得期間が「1か月未満」
・育児休業や短時間勤務により、周囲の社員の負担が「増えている」と回答した企業は50.4%
・101~300名企業では、周囲の社員の負担増を感じている企業が61.5%
・女性活躍施策を3つ以上実施する企業では、93.5%が何らかのプラス効果を実感
女性管理職を「増やしたい」だけでは増えない
今回、特に興味深かったのが女性管理職についてです。
女性管理職がゼロまたは10%未満の企業は61.9%に達しました。一方で、「女性管理職を積極的に、またはある程度増やしたい」と回答した割合は、女性管理職比率が低い企業と高い企業でほとんど差がありませんでした。
つまり、「女性管理職を増やしたい」という経営側の意識だけでは、実際の登用にはつながらないということです。
女性管理職を増やすうえでの最大の課題は「管理職候補となる女性社員が少ない」45.9%で、「女性社員本人が管理職を希望しない」32.2%、「育児等との両立が難しい」23.3%が続きました。
女性管理職比率を高めるには、単に数値目標を掲げるだけではなく、採用、定着、育成、キャリア面談、評価制度、柔軟な働き方などを一体的に整備し、管理職候補となる人材を継続的に育てていく仕組みが必要です。
男性育休は「取れるか」から「どのくらい取れるか」へ
男性の育児休業についても、企業側の意識には変化がみられます。
男性従業員から1か月以上の育児休業の申出があった場合、「積極的に取得してほしい」「取得しても問題ない」「業務調整は必要だが取得してもらう」と回答した企業は、合計75.9%に達しました。
一方で、取得実績があり取得期間を把握している企業では、最も多い取得期間が「1か月未満」の企業が69.0%でした。
男性育休については今後、単純な取得率だけではなく、
「実際にどのくらいの期間取得できるのか」
という点が、より重要な指標になっていくと考えられます。
育休を取る人だけでなく、「支える人」への対策が必要
今回の調査で最も重要な結果の一つが、育児休業や短時間勤務を利用する従業員がいることによる、周囲の社員への影響です。
「他の社員の負担が大きく増えている」「やや増えている」と回答した企業は合計50.4%。つまり、約2社に1社が、制度利用に伴う周囲の負担増を実感していることになります。
育児休業取得者の業務については、「同じ部署の社員が分担する」が50.7%、「上司・管理職が担当する」が31.5%でした。外部委託やDXによる対応はまだ少数にとどまっています。
さらに探索的な分析では、同じ部署の社員や管理職が業務を引き受ける企業ほど、周囲の負担増を感じる割合が高いという関連もみられました。なお、この結果は因果関係を示すものではありません。
今後の両立支援では、制度利用者への配慮だけでなく、
業務を引き受ける同僚や管理職をどう支援するか
という視点が欠かせません。
女性活躍・両立支援は「コスト」ではなく人的資本投資へ
一方で、女性活躍や両立支援に積極的に取り組む企業では、一定の効果も確認されました。
女性活躍施策を3つ以上実施している企業では、93.5%が何らかのプラス効果を実感しています。全体では「離職防止につながっている」25.9%、「若手社員の採用に効果がある」23.7%、「女性の採用がしやすくなった」19.3%などの回答がみられました。
もちろん、今回の調査だけで施策と効果の因果関係を断定することはできません。
しかし少なくとも、女性活躍や育児支援を単なる法令対応としてではなく、採用・定着・従業員満足度を高めるための人的資本投資として捉える余地があることは、今回の結果からも読み取れます。
これから必要なのは「制度を使っても職場が回る会社」
今回の調査を通じて見えてきたのは、女性活躍と仕事・育児の両立支援が、すでに「制度を作るかどうか」という段階から、その先へ進み始めているということです。
制度を整備する。
育児休業を取得できるようにする。
柔軟な働き方を導入する。
これらはもちろん重要です。
しかし、制度の利用が増えた結果、周囲の社員に過度な負担が集中したり、復職後のキャリアが停滞したり、管理職が業務を抱え込んだりすれば、制度は長期的には持続しません。
企業にこれから求められるのは、女性活躍、男性育休、両立支援を個別の制度として考えるのではなく、採用・定着・育成・評価・配置・報酬・業務設計まで含めた人材戦略として再設計することです。
飯田橋・神楽坂社会保険労務士法人では、今回の調査結果をもとに、企業が「制度を整える段階」から、
「制度を使っても、人と業務が回る組織」
へ移行するための支援を進めてまいります。
今回の調査結果について、詳しい分析・企業規模別比較・業種別分析・経営への提言をまとめた「第2回 人的資本・労務リスク調査2026秋 白書」も公開しています。
▶ 第2回 人的資本・労務リスク調査2026秋 白書はこちら
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